近年、サイバー攻撃の脅威は年々増大しています。企業や組織にとって、ネットワークを安全に守ることは、事業継続の観点からも重要な課題です。
そのような中、統合脅威管理(UTM)アプライアンスであるFortiGateが注目を集めています。FortiGateは、ファイアウォールやアンチウイルスなど、複数のセキュリティ機能を統合した製品です。これにより、ネットワークの入口から出口まで、多層防御を実現できます。
本記事では、FortiGateの概要や特徴を解説します。FortiGateの導入を検討している企業は、ぜひ参考にしてください。
FortiGate(フォーティゲート)とは?
FortiGateは、アメリカに本社を置く「Fortinet社」が提供するUTM機器です。まずは、FortiGateの概要について、UTMにも触れながら詳しく解説します。
FortiGateの主な役割
FortiGateの主な役割は以下の2点です。
- 外部からの攻撃・脅威を防ぐこと
- 内部からの情報漏洩を防止すること
FortiGateは、セキュリティに関する脅威から、データやシステム、アプリケーションを守るために利用されています。
そして、Fortinet社はセキュリティ対策のためのハードウェアとソフトウェア、その他関連サービスを全て自社開発しています。
FortiGateはUTM市場で世界シェア1位
FortiGateは、世界でNo.1のシェアを誇るUTM機器です。FortiGateのシェアが大きい主な理由は以下の3点です。
- 豊富な機能
- 高性能
- コスパが良い
従来は、ファイアウォール機器やアンチウイルスソフトなどのセキュリティ対策をポイントごとに、複数の製品で行っていました。FortiGateでは、複数のセキュリティ機能を1台に統合することで、導入の手間やセキュリティ対策のコストを削減できます。
UTMとは?
UTMは、「Unified Threat Management」の略で、日本語では「統合脅威管理」と訳されます。UTM機器は、一般的に以下の2点を満たすものとされています。
- 1台に複数のセキュリティ機能を搭載したハードウェア
- インターネットと企業ネットワークの境界に設置
セキュリティ対策を1台の機器に統合することで、手間やコストを削減するメリットがありますが、複数機能を集約することにより、通信の処理速度が低下する可能性もあることがデメリットとして挙げられます。
FortiGateの必要性
従来は、多様なサイバー攻撃を防ぐために、ファイアウォールツールやエンドポイントセキュリティツールなど、いくつもの機器やソフトを導入していました。
しかし、FortiGateは1台でさまざまなセキュリティ機能を統合しているため、機器導入コストを抑えることができます。
また、社内リソースで、ITやセキュリティに関する専門的な知識がない場合でも、高度なセキュリティ対策が可能です。セキュリティにあまり費用や人材を割けない企業で、FortiGateの必要性が高まっています。
FortiGateの基本機能
FortiGateは、多様なセキュリティ機能を統合したネットワークセキュリティアプライアンスです。ファイアウォール・VPN・VDOMの主な3つの機能で、企業のネットワークを保護しています。
ファイアウォール
FortiGateのファイアウォール機能は、不正な通信を防ぎ、ネットワークを保護するための重要な要素です。
トラフィックの監視と制御を行い、不審な動きを検出することで、内部ネットワークを外部からの攻撃や侵入から守ります。また、ポリシーベースの設定により、特定のユーザーやグループに対するアクセス制限を細かく管理できます。
ファイアウォールの入口対策と出口対策は後ほど詳しく解説します。
VPN
FortiGateは、仮想プライベートネットワーク(VPN)のサポートも提供しています。VPNにより、遠隔地からの安全なネットワークアクセスが可能になります。
リモートワークや出張先でも、セキュリティレベルを維持しながら業務を行えるため、リモートワークを推奨する企業でも導入可能です。
VDOM
VDOM(Virtual Domain)は、1つのFortiGate機器を複数の仮想デバイスとして運用する機能です。
異なる部署やプロジェクトごとに別々のセキュリティポリシーを設定し、それぞれ独立したネットワークとして管理できます。
VDOMを利用することで、リソースの効率的な使用と管理の柔軟性が高まり、コスト削減にもつながります。
FortiGateは入口対策と出口対策がしっかりと行われている
FortiGateは、企業ネットワークのセキュリティ対策ツールとして注目を集めています。ネットワークの入口対策と出口対策のどちらも、しっかりとセキュリティ確保がされていることが注目を集めているポイントです。
この入口・出口対策について詳しく解説します。
入口対策
入口対策は、悪意を持ったユーザーによる、サーバーダウンやネットワークウイルスに感染させるなどの外部からの攻撃への対策をすることです。
FortiGateの入口対策の4つの機能について紹介します。
アンチウィルス
FortiGateのアンチウィルス機能は、ネットワークをウイルスやマルウェアから守る機能です。入ってくるファイルやデータストリームをリアルタイムでスキャンし、既知のウイルスやマルウェアの署名を基に脅威を識別し排除します。
また、定期的なアップデートにより、新しい脅威にも迅速に対応し、ネットワークのセキュリティを維持します。FortiGateのアンチウィルスは、組織のデータとシステムを保護する上で不可欠な要素です。
アンチスパム
FortiGateのアンチスパム機能は、不要なメールやフィッシング詐欺からユーザーを保護する機能です。メールのヘッダー、本文、送信者の評判を分析し、スパムとして分類されるメールをフィルタリングします。
これにより、メールボックスをクリーンに保ち、フィッシングやマルウェアのリスクを減少させます。FortiGateのアンチスパムは、企業のコミュニケーションを安全かつ効率的に保つために重要です。
不正侵入防御(IPS)
FortiGateの不正侵入防御機能(IPS)は、ネットワーク内の異常な活動や攻撃をリアルタイムで検知し、防御する機能です。
不正アクセスやサイバー攻撃など会う意のある攻撃を検知した時、セキュリティ管理者へ通知を送るだけでなく、自動で通信の遮断を行う機能も備わっています。
クラウドサンドボックス
FortiGateのクラウドサンドボックス機能は、未知の脅威やゼロデイ攻撃(未対策の脆弱性への攻撃)を防ぐための機能です。
疑わしいファイルやプログラムを隔離した安全な環境(サンドボックス)で実行し、挙動を分析します。これにより、システムに影響を与えることなく、新しいタイプの攻撃を識別し、対処することが可能です。FortiGateのクラウドサンドボックスは、組織を最新の脅威から守るために重要な機能です。
出口対策
出口対策とは、企業の機密情報が外部に漏れないように対策を行うことです。FortiGateの主な出口対策の機能を3つ紹介します。
Webフィルタ
FortiGateのWebフィルタ機能は、インターネットの利用を安全に管理するための機能です。不適切なサイト、危険なWebサイトへのアクセスをブロックし、組織のポリシーに基づいたWeb閲覧環境を提供してくれます。
カテゴリベースのフィルタリングにより、ユーザーのWebアクティビティを監視し、セキュリティや生産性を維持するのに役立ちます。FortiGateのWebフィルタは、サイバー脅威から組織を守るために重要です。
アプリ制御
FortiGateのアプリ制御機能は、ネットワークを介して利用されるアプリケーションを精密に管理します。この機能により、組織は特定のアプリケーションの使用を許可または禁止、制限し、ネットワークの安全性と効率を高めます。
不正なアプリやリスクが高いアプリの使用を防ぎ、ネットワークパフォーマンスとセキュリティを維持するのに効果的です。FortiGateのアプリ制御は、組織のポリシー遵守とセキュリティ管理に不可欠です。
アンチボット
FortiGateのアンチボット機能は、ボットネット(感染したネットワーク)や自動化されたマルウェア攻撃からネットワークを保護します。この機能は、ボットによる不正な通信を検出し、それを遮断または隔離します。
ボットネットはデータ漏洩やDDoS攻撃などを引き起こす可能性があるため、この機能は重要です。FortiGateのアンチボットは、サイバーセキュリティを強化し、組織のリスクを軽減するために不可欠なツールです。
FortiGateの特徴
FortiGateは、高度なセキュリティと柔軟性を両立したファイアウォール機能を備えており、多くの企業が導入しています。ここでは、FortiGateの特徴を5つ紹介します。
24時間365日のリアルタイム保護
FortiGateの1つ目の特徴は、24時間365日体制でのリアルタイム監視をしていることです。
現代では、常に稼働しているアプリやシステムがほとんどです。そのため、セキュリティ監視システムも常に稼働することが欠かせません。
FortiGateには、200名以上の専任エンジニアが配置されており、24時間体制でセキュリティ状況を監視・分析しています。既知の脅威だけでなく、未知の脅威に対しても迅速に検知し、対処することが可能です。
FortiGateがセキュリティセンサーになる
FortiGateの2つ目の特徴は、FortiGateデバイスがセキュリティセンサーとして機能することです。世界中に設置されたFortiGateデバイスが、絶えずネットワークのセキュリティ状況を監視し、新たな脅威や変化をリアルタイムで検出してくれます。
FortiGateが、脅威を検出するとセキュリティ定義ファイルを作成します。その、定義ファイルを他のユーザーにも配布することで、常に最新の脅威情報に基づいた保護が可能になります。
セキュリティ機能とネットワーク機能の統合が可能
FortiGateの3つ目の特徴は、セキュリティ機能とネットワーク機能の統合が可能なことです。2つの機能を統合し、強固なセキュリティ対策と効率的なネットワーク管理を同時に提供しています。
従来は、セキュリティとネットワーク機能は別々のシステムで管理されていました。
FortiGateではこれらを一元化し、統合管理することで、セキュリティ対策の強化だけでなく、ネットワークの運用効率も大幅に向上させることが可能です。
構築や運用・保守に時間やリソースを割くことが難しい企業こそ、FortiGateの利用がおすすめといえます。
先進的な機能の即時導入
FortiGateの4つ目の特徴は、最新かつ先進的なセキュリティ機能を即時に導入できる点です。先ほど、入口対策や出口対策について解説しましたが、紹介したウイルスや攻撃などは一例にすぎません。さまざまな種類のウイルスや攻撃があり、日々変化しながら新たな脅威が継続的に現れます。
FortiGateでは、ゼロデイ攻撃への対応や暗号化通信スキャンといった先進的な技術や機能の即時導入が可能です。
また、新機能追加や脆弱性対応のために、都度OSアップデートが走り、既存のシステムに追加負担をかけることなく、新機能の実装や最新のセキュリティ対策ができます。
小規模~大規模まで対応可能な幅広いラインナップ
FortiGateの5つ目の特徴は、ラインナップが豊富なことです。
FortiGateには、小規模事業者から大企業向けまで、ネットワークの規模や帯域に合わせてさまざまな製品が用意されています。
さまざまな規模や要件のネットワーク環境に柔軟に適応し、一貫したセキュリティ保護を提供します。
セキュリティ製品の出荷台数は世界一で、705,000社以上が使用しているため、豊富な導入実績として信頼できることも特徴の1つです。
FortiGateが選ばれる理由
FortiGateは、セキュリティ製品の出荷台数が世界一です。優れた機能と信頼性により、日本国内でも広く採用されています。ここでは、日本国内でも人気な理由を解説します。
日本国内での販売実績が豊富
FortiGateは、2003年に「フォーティネットジャパン合同会社」を設立しており、日本国内での販売実績が豊富です。特に、性能が高くコストが安いため中小企業で圧倒的なシェアを誇っています。
また、Fortinet社認定のパートナー企業として、「Canon」がこれまで10万台近く販売し、環境を構築するなど国内での導入環境が確立していることも人気な理由の1つといえます。
FortiGateは日本語GUIに対応している
FortiGateは日本語のGUI(Graphical User Interface)に対応している点も、日本国内のユーザー数が多い理由の1つです。
海外製のネットワーク機器やセキュリティソフトは、日本語に対応していないことが多く、取扱説明書も日本語版がないものも多いです。
FortiGateは、日本語表示なため直感的で分かりやすい操作ができます。またタイムゾーンも日本で設定可能なため、時差による時刻設定の不具合が起こらないことも嬉しいポイントです。日本で利用したいユーザーにとって大きなメリットといえるでしょう。
日本特有の脅威に強い
日本特有の脅威に強いことも、FortiGateが選ばれる理由の1つです。
- セキュリティの監視
- マルウェアの分析
- セキュリティ対策の技術研究
これらを日々行っている日本のエンジニアが情報をデータベース化し、対策を行っています。日本国内で作成された独自のブロックリストなどを用いて日本特有の脅威にも対策しています。
Fortigateが特に活かせる分野
FortiGateは、中小企業から大企業までさまざまな分野で利用されています。ここからは、Fortigateが特に活かせる分野について、具体例も交えて紹介します。
金融業界
最初に紹介するFortiGateが活かせる分野は、金融業界です。顧客のお金や金融情報を保護するために、金融業界では強力なセキュリティ対策が必要です。
クレジットカード決済や電子決済の利用が増加したため、さらにセキュリティリスクが高まり、対策が重要視されています。
FortiGateは、侵入防止システム、高度なウイルス対策、脅威検出技術を提供し、金融機関のネットワークをサイバー攻撃から守る役割を果たしています。
医療業界
医療現場では、コロナ禍の影響などもありDXが進んでいます。
電子カルテで業務効率化を図ったり、地震や津波といった自然災害が起きた場合でも動き続けるシステムを構築したりといった取り組みがされています。
医療業界は、サーバーダウンでシステムが停止すれば患者の命にもかかわることや、患者の個人情報を多く扱うことなど、特にセキュリティ対策が重要視されている分野です。
FortiGateは、最新のサイバー攻撃を防ぎ、24時間体制で監視しているため、医療DXに欠かせないツールといえるでしょう。
教育業界
大学や研究機関を狙ったサイバー攻撃も増えていることから、教育業界においてもFortiGateの活用が増えています。
生徒や教職員のデータ保護と教育環境のセキュリティ強化のために、FortiGateの活用は重要です。教育機関は生徒の個人情報や教育資料を大量に扱い、またオンライン学習プラットフォームの利用が増加しているため、セキュリティ対策は不可欠です。
FortiGateは、侵入防止、ウイルス対策、およびWebフィルタリング機能を提供し、教育機関のネットワークをサイバー脅威から守ります。また、不適切なコンテンツへのアクセスを制限し、学生のインターネット利用環境を安全に保ちます。
製造業
FortiGateは、製造業でも多く活用されています。
サイバー攻撃は、「脆弱性(セキュリティ的に弱い部分)」や「サーバーがダウンすると困る部分」が標的とされることが多いです。そして工場の生産データやラインを動かすシステムは格好のターゲットとされています。
実際に、さまざまなサイバー攻撃で生産ラインがストップし、企業や国全体に深刻な被害を与えている事件も複数発生しています。
各地に製造拠点を置くなど複雑なネットワーク環境で、攻撃対象とされる傾向が大きい製造業で、ネットワーク機器とセキュリティ機器の統合が可能なFortiGateは必要不可欠といえます。
行政・公益企業
行政機関や公益企業は、市民の個人情報や重要な公式データを扱うため、高度なセキュリティ対策が必要です。
マイナンバー制度の導入やデジタル庁が促進するガバメントクラウドの利用などで、セキュリティ対策が必要と考えられています。
FortiGateの導入により、行政機関や公益企業は、市民からの信頼を維持し、安全なデジタルサービスを提供することが可能になるでしょう。
まとめ
FortiGateは、セキュリティ機能とネットワーク機能を統合し、高いコストパフォーマンスを発揮するため世界中で利用されているUTM機器です。特に中小企業で導入するメリットが大きいといえます。
FortiGateの導入を検討している企業は、HENNGE株式会社が提供する「HENNGE One」がおすすめです。
近年はリモートワークが推奨され、導入する企業が増えるとともに、リモートワークを行うためのVPN機器やリモートデスクトップを狙った攻撃が多発しています。
多要素認証機能を利用して、VPNやリモートデスクトップへの攻撃を防ぎ、セキュリティを強化するサービスがHENNGE Oneです。このHENNGE Oneは、2023年1月よりFortiGateに対応しています。
HENNGE OneとFortiGateを連携させることで、アクセス制御による不正アクセスを防ぐ効果があります。しっかりとしたセキュリティ対策を行いたいという企業はぜひ導入を検討ください。
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