プロビジョニングとは? 意味と種類、クラウドとの関係性

 2023.08.09  クラウドセキュリティチャネル

現代企業の業務は、デジタル技術に大きく依存しています。しかし、デジタル技術を効果的に活用するには、適切な手順でITインフラストラクチャが事前に構築されていなければなりません。そこで必要になってくるのが「プロビジョニング」と言われるプロセスです。本記事では、このプロビジョニングの概要や種類をわかりやすく解説します。

プロビジョニングとは? 意味と種類、クラウドとの関係性

プロビジョニングの意味

プロビジョニング(Provisioning)とは、「供給」や「提供」を意味する英語です。IT、特に通信の分野でプロビジョニングと言われる場合、サーバーやネットワークなどのITインフラストラクチャを必要に応じて利用できるように準備することを指します。また、データやリソースへのアクセスを管理し、ユーザーやシステムがそれらを利用可能にすることもプロビジョニングの一部です。

プロビジョニングとデプロイメントの違いが気になる人もいるでしょう。簡単に言うと、プロビジョニングはデプロイプロセスの一部です。プロビジョニングが完了した後、デプロイのステップは「構成」へと続きます。

プロビジョニングは、企業がITを効果的に活用するための基盤を構築するうえで非常に重要です。プロビジョニングを適切に行えるかどうかで、ITを利用した業務の効率性や快適性、セキュリティの安全性、ITにかかるコストなど、数多くのことが左右されます。

情シスあるある課題とその解決策は?情報システム部門実態調査2022

プロビジョニングの種類

プロビジョニングの具体的な内容は多種多様です。その主だった種類としては、サーバープロビジョニング、ユーザープロビジョニング、サービスプロビジョニング、シン・プロビジョニングの4種類が挙げられます。それぞれの概要は以下の通りです。

サーバープロビジョニング

サーバープロビジョニングとは、必要なリソースに基づいてネットワークで使用するサーバーを準備するプロセスです。このプロビジョニングには、新しいマシンを作成して動作可能な状態にするために必要なすべての操作が含まれており、システムを望ましい状態に定義します。

サーバープロビジョニングの具体的な作業内容としては、データセンター内の物理的なハードウェアのセットアップ、OSやアプリケーションなどのソフトウェアのインストールと設定、ミドルウェア、ネットワーク、ストレージへの接続などが挙げられます。サーバーのメンテナンスや予備サーバーの調整などもここに加えられるでしょう。

ユーザープロビジョニング

ユーザープロビジョニングとは、アクセス権限や認証情報などを監視するID管理を指します。ユーザープロビジョニングが必要な場面は、システム、ネットワーク、データベース、メーラーなどさまざまです。

内部不正のリスクも考えて、セキュリティレベルを高めるためには、このユーザープロビジョニングは画一的に行うのではなく、ユーザーの権限や役割などに応じて柔軟に行うことが重要です。必要な人に必要なとき、必要なだけのアクセス権限を与えるのが理想になります。そのため、ユーザープロビジョニングには手間がかかりますが、最近では管理用のクラウドツールなども提供されています。

サービスプロビジョニング

サービスプロビジョニングとは、インターネット通信事業者が行うサービスの準備作業です。回線を引いたり無線を構築したりといった通信サービスの提供に必要な環境構築を行います。メールやクラウドサービスなどを利用するためには当然インターネット接続が必要なので、現代の企業が業務を行うためにはサービスプロビジョニングが必須です。

サービスプロビジョニングは私たちの日常的な私生活においても身近なものです。たとえば、自宅にインターネット回線を引いたり、スマートフォンなどのモバイル機器で使うSIMカードの設定をして通信できるようにしたりするのがその具体例になります。また、今日のビジネスではクラウド活用が進んでいますが、クラウド基盤を準備するのもサービスプロビジョニングの一種です。

シン・プロビジョニングとは

上記で紹介したプロビジョニングの種類とは別に、ストレージを効率よく利用する技術として「シン・プロビジョニング」があります。シン・プロビジョニングは、柔軟なストレージ計画やストレージ使用率のより優れた制御などを実現するために実施されます。

シン・プロビジョニングにおいてはクラウドストレージ(仮想ストレージ)の運用が前提とされており、ストレージ使用率を監視し、それがいっぱいになってくると適宜容量を追加していきます。これによって必要な分だけのストレージを利用できるようになるので、効率的にユーザーにストレージ容量を割り当てて、消費電力やメンテナンス費用などの無駄なコストを削減可能です。シン・プロビジョニングは、クラウドストレージのGoogleドライブなどで利用されています。

プロビジョニングとクラウドとの関係

プロビジョニングとクラウドは密接な関係があります。根本的な部分から言えば、インターネット環境を構築するサービスプロビジョニングを行わなければ、クラウドサービスを利用できません。その意味では、「プロビジョニングがクラウド活用の前提になっている」というのが、第一の関係です。

続いて挙げられるのが、「クラウド技術がプロビジョニングを新しい局面に導く」という関係です。たとえば、ストレージ容量をリアルタイムに増減して最適化するというシン・プロビジョニングは、物理サーバーにとらわれないクラウドストレージだからこそ可能になる手段であると考えられます。

デジタル化が進んでいる昨今、企業が抱えるデータ容量は年々ますます増大しています。事業が拡大していくにつれて、ストレージ容量は枯渇していきますが、自社でデータセンターを用意して物理サーバーを次々と増設していくようなことは、経済的にも時間的にも大半の企業にとって容易ではないでしょう。

その点、クラウドストレージサービスを利用すれば、自社でサーバーの構築をしたり、その管理運用をしたりすることなく、低価格・低負担で柔軟にストレージ容量の需要変化に対応できます。従来のサーバープロビジョニングは、クラウドストレージの普及によって新しい段階に突入したとも捉えられるでしょう。

また、クラウドという観点からプロビジョニングを見る際にはSaaSにも着目する必要があります。昨今は業務に合わせて複数のSaaSを組み合わせて利用する企業が増加しており、HENNGEの調査では1社あたり平均7つのSaaSが使われているとも言われています。SaaSはユーザープロビジョニングのみで利用が可能なケースがほとんどですが、そのユーザープロビジョニングを効率的に行う手法についてはいまだに解が出ていません。一方で昨今では多くのSaaSがJust in Time Provisioningと呼ばれるIDaaSを経由してログインすると自動的にユーザープロビジョニングがなされるという機能を備えていますので、HENNGE OneのようなIDaaSを基盤として採用するのも一つの手だといえるかもしれません。

まとめ

プロビジョニングとは、需要に応じてITを活用できるようにするデプロイプロセスの一部です。プロビジョニングを適切に実施できるかどうかは、企業のIT活用の成否を左右します。プロビジョニングには多くの手間がかかりますが、その一部はクラウドサービスによって効率化可能です。たとえば、クラウドセキュリティソリューション「HENNGE One」は、柔軟なアクセス制御や堅牢な認証技術によってユーザープロビジョニングを支援します。ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

情報システム部門実態調査 2022 〜50名を超える情シス座談会から見えてきた 各社の課題や解決方法〜

RECENT POST「セキュリティ動向」の最新記事


セキュリティ動向

VPNでセキュリティ対策は万全か?その役割と弱点とは?

セキュリティ動向

Microsoft Office 2016のサポート終了に伴う企業への影響とは

セキュリティ動向

企業でGoogleドライブを活用する際に行うべきセキュリティ対策まとめ

セキュリティ動向

実際に安全なの?OneDrive(ワンドライブ)の最新セキュリティ機能とリスクを徹底分析

プロビジョニングとは? 意味と種類、クラウドとの関係性