メール誤送信対策の必要性と有効性について解説

 2024.06.07  クラウドセキュリティチャネル

Microsoft TeamsやSlack、LINE WORKSなどのチャットツールの普及でビジネスコミュニケーションの手法は変化していますが、依然として取引先とのやりとりのほとんどは電話や電子メールで行われています。そして多くの企業で使われるからこそ、さまざまな事例が後をたたないのが電子メールの誤送信による情報漏えいです。

この記事では改めて電子メールの誤送信のリスクと、その対策に取り組む意義や具体的な対策手法、効果について解説します。

企業で起こり得るメールの誤送信例

メール誤送信対策の必要性と有効性について解説 1

宛先を間違えてメールを送信してしまったり、メールの添付ファイルを想定のものと違うものを送ってしまったり、このようなメール誤送信の体験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。

メールは、ビジネスシーンにおいて欠かせないコミュニケーションツールです。しかし、企業におけるメールの誤送信は、情報漏えいや企業の信用失墜など、深刻な問題を引き起こす可能性があります。

ここでは、企業で起こり得るメールの誤送信例を、具体的なケースと共に紹介します。

タイプミス

よくあるメール誤送信例1つ目が、タイプミスによる誤送信です。宛先が1文字追加されたり、1文字抜けたりするだけで、意図していない相手にメールが送信されてしまい、重大なトラブルとなります。誤った相手にメールが送信されると情報漏えいに繋がり、場合によっては企業が賠償するケースも存在します。

また、宛先ではなく件名や本文中で誤字や脱字が多いと、相手に不誠実な印象を与えたり、内容が理解しづらくなったりするなど、信頼関係を損なう恐れもあるでしょう。

オートコンプリート機能による入力ミス

よくある誤送信例2つ目は、予測変換や補完機能(オートコンプリート機能)の選択ミスによる誤送信です。

予測変換やオートコンプリート機能は、便利なため導入している企業やユーザーが多くいます。しかし、便利な一方で、この機能が原因で誤送信が発生するケースも少なくありません。例えば、過去のメール履歴から候補が表示されるオートコンプリート機能は、類似のメールアドレスが多い場合、誤った相手に送ってしまうリスクが高いです。

宛先の見間違い

よくある誤送信例の3つ目は、宛先の見間違いによるものです。過去のメールやアドレスのリストからコピー&ペースとしてメールアドレスを入力する場合に、似ている別のアドレスをコピーしてしまい、誤送信をしてしまうケースが多く発生しています。

特に社内でメールを送信する際は、ドメインが同じため似た形式のメールアドレスも多いです。そのため同姓同名の社員がいる場合に、誤送信も多くなります。

また、取引先企業の担当者にメールを送信する際、誤って別の会社に所属する同姓同名の担当者に送ってしまうことも考えられます。

CC・BCCの間違い

よくある誤送信例4つ目は、CCとBCCへのアドレス入力ミスによるものです。BCCに入れて送信したつもりが、すべてCCにに入れて送信されており、メールアドレスが漏えいする事故が頻発しています。

CCは、チームで情報を共有する際によく使用されます。また、TO(宛先)へ送信したメールを、CCに入れたメンバーも確認してほしい場合に用いられます。CCでメールを送信すると、受信側にはTOに入力したアドレスも、他のCCに入れられているアドレスも表示されます。

一方で、BCCに入れてメールを送信した場合、受診側ではTOやCCに入れられているアドレスは表示されません。社名変更や部署異動など複数の企業のアドレス宛てに一斉送信をする場合にBCCが用いられるケースが多いです。

メーリングリストの設定ミス

よくある誤送信例5つ目は、メーリングリストが正しく設定されていないことによるものです。

メーリングリストを作成すると、毎日もしくは毎週、何度も同じメンバーにメールを送信する際、メーリングリストのアドレスを入力するだけで、一斉送信ができるため業務の効率化が図れます。メーリングリストで情報漏えいが起こるケースは以下の2パターンです。

  • メーリングリストに誤ったアドレスを登録した
  • 社内メーリングリストに、すでに退職しているメンバーが残っている

添付ファイルミス

最後に照会するメール誤送信の事例は、添付ファイルミスです。送信するファイルと異なるファイルを誤って添付してしまうケースも多く発生しています。

たとえば、顧客情報を含むファイルを誤って別の相手に送ってしまうと、情報漏えいに繋がる重大なミスとなります。また、関係者への報告資料に誤ったバージョンを添付してしまうなど、業務に支障をきたすことにも繋がるでしょう。

万が一、ウイルスに感染しているファイルを添付していまい、メール受信者が添付ファイルを開いた場合は、送り先の企業のシステム全体に被害が拡大する可能性があります。

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企業における情報漏えいの危険性

東京商工リサーチの「上場企業の個人情報漏えい・紛失事故」調査(2022年)によれば、個人情報が漏えいする理由として、「ウイルス感染・不正アクセス」に次いで多い原因に「誤表示・誤送信」(メールの送信間違いなどの人為的ミスが中心)が挙げられています。

このようなインシデントでは個人向けの事業を展開するBtoC企業が注目を浴びやすい傾向にありますが、BtoB企業においても大きな影響を受けます。顧客や取引先の情報が漏えいした場合、損害賠償金額や事後対応といったコストだけでなく、企業ブランドイメージの低下や風評被害によりその後の取引に大きく影響を及ぼすことから、事業継続やコーポレートガバナンスを問われる問題にまで発展します。

メールの誤送信時に直ちにすべき対応

メール誤送信対策の必要性と有効性について解説 2 

ビジネスシーンでは日々数多くのやりとりがあるため、メール誤送信は誰にでも起こり得るといえます。

そこで、誤送信をしてしまった場合の対策についてもあらかじめ考えておくことで適切な対処ができます。ここでは、メール誤送信に気づいたときに取るべき行動を紹介します。

送信相手へ謝罪する

誤送信をしてしまった場合に、最も重要なことは、メールを送付した相手にいち早く謝罪の連絡をすることです。

誤送信に気づいた時点で謝罪メールをいれることで、相手がメールを開封する前にメールを削除し、情報漏えいを最小限に抑えられる可能性もあります。

謝罪の手段としては、電話で直接することが望ましいです。メールで謝罪するよりも確実で、誠意も伝わりやすいです。また、状況を詳しく説明しやすいという利点もあります。

謝罪の連絡をする際は、以下の先斗を伝えることを意識しましょう。

迷惑をかけたことに対する謝罪を伝える

  • 誤送信の状況を簡潔に説明
  • 原因を説明
  • 再発防止策を伝える

【テンプレート】誤送信のお詫びメール文例 

電話番号がわからない場合や多くの相手に誤送信のメールを送付した場合などは、メールによる謝罪が最適です。メールでの謝罪の際、どのように記載するべきかわからず不安という方は、以下のメール文を参考にしてください。

件名:メール誤送信の謝罪とメール削除のお願いについて

株式会社〇〇
営業部 〇〇様

いつも大変お世話になっております。
先ほどお送りいたしましたメールにつきまして、◯◯に誤りがございました。
ご迷惑をおかけし大変申し訳ございません。

該当メール
送信日時:
差出人:
件名:

誤:(誤っていた内容)
正:(修正したい内容)

送信前に確認を怠り、このような事態を招いてしまいましたことを、重ねてお詫び申し上げます。
今回の件を真摯に受け止め、今後このようなことがないよう、送信前の確認を徹底いたします。
また、誤送信メールに記載されていた情報に関しましては、厳重に管理いたします。

お手数ではございますが、メールは開封せず破棄いただけますようお願い申し上げます。

この度は、ご迷惑とご心配をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます。
今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(自社の署名)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

上司・関係者へ報告する

メール誤送信は、個人情報や機密情報漏えいなど、重大な問題に発展する可能性があります。そのため、誤送信に気づいたら、速やかに上司や関係者へ報告しましょう。

誤送信に気づいたらメール送信者に連絡するよりも先に、上司に報告するように指示している企業も多いです。自社の対応フローをあらかじめ確認しておきましょう。

ミスをしたことで焦ってしまい、伝えたい内容がうまく伝わらないこともあるため、報告前に状況をメモしておくと良いでしょう。

報告の際、伝えるべき内容は以下の5つです。

  • いつ誤送信したか
  • 送信相手
  • 誤送信したメールの内容
  • 現在の状況と今後の対応
  • 再発防止策

情報漏えいの状況について調査する

送信者に報告、上司に報告したあとは、情報漏えいの状況を調査する必要があります。

どのような情報やファイルを誰に送信してしまったのか、どのくらい時間が経っているのかを正確に把握することが重要です。これにより、漏えいした情報の機密性や影響を評価し、適切な対策を講じることが可能になります。

情報漏えいは法的な問題や組織の信頼性にも関わる重大な問題ですが、すぐに適切な対応をすることで、リスクを最小限に抑えることができます。また、次の章で詳しく解説しますが、原因を特定し将来同様の事態を防ぐための改善策を検討することも重要です。

社内で再発防止策を検討する

宛先入力ミスや添付ファイルの選択ミスなどの人為的ミスによる誤送信は、誰にでも起こりうるものです。一度誤送信をしてしまった場合は、同様のミスを繰り返さないために、再発防止策を考えることが重要です。

最初に、誤送信が起こった背景や原因を調査します。送信時の手順やポリシーが守られていたか確認しましょう。

続いて、なぜミスが起きたのかを考えてみましょう。従来の手順どおり行わなかったためミスが起きたのか、手順通り作業していたにもかかわらずミスが起きたのかによって対処法も変わってきます。

原因が追求できたら、その原因をなくすための対策を具体的に考えましょう。これについては次の章で詳しく解説します。

メールの誤送信を防ぐ対策法

メール誤送信対策の必要性と有効性について解説 3 

メール誤送信で情報漏えいをすると、企業のイメージダウン、情報漏えいの賠償支払い、寛永者への謝罪など対応のために、多大な費用と時間を要します。これらの損害を防ぐために行うべき対策を紹介します。

セキュリティの運用ルールを作る

メール誤送信を防ぐためには、セキュリティ運用ルールを策定し、徹底することが重要です。ルールがなければ、従業員がそれぞれ設定を変更し、個々の判断でメールを送信するなど、誤送信のリスクが高くなります。

例えば、宛先リストを作成し、誤ったアドレスを入力できないようにするルールを設定している企業も存在します。他にも誤送信を防ぐための運用ルールとして以下のようなルールがあります。

  • アドレスの予測入力を不可として、選び間違いを防ぐ
  • 誤送信防止機能を有効にする
  • 外部へのメール送信を制限し、承認ルールを設ける

送信前の確認作業を社内で徹底する

メールを作成して送信する前に、一度自分で宛先を確認し、本文を読み直すことを従業員に徹底させることで、誤送信リスクを減らすことに繋がります。

社内でダブルチェックを徹底する 

送信前に必ず第三者によるダブルチェックを行うことを徹底しましょう。メール作成者が自己チェックを行うだけでなく、上司や同僚などの別の担当者が確認することで、誤りを見落とすリスクを減らす効果があります。

社外に送信する場合は部署内の同僚によるダブルチェック、機密情報や顧客の個人情報がある場合は上司がダブルチェックをするなど、自社に合ったダブルチェック体制を構築することが重要です。

宛先・本文・添付ファイルのチェックリストを作成する

送信前に必ずチェックすべき項目をまとめたチェックリストを作成しておくと良いでしょう。

  • 宛先: 送信先のメールアドレスに誤りがないか確認する
  • 本文: 誤字脱字や文法の間違いがないか確認する
  • 添付ファイル: 送信するべきファイルを添付しているか確認する
  • 件名: 件名が内容を正しく反映しているか確認する
  • 署名: 署名に誤りがないか確認する

上記のようなチェックリストを作成して、社内全体で共有し、誰でも簡単に利用できるようにしておきましょう。また、定期的に見直しを行い、必要に応じて更新していくことも大切です。

情報漏えいのリスクを周知する

メールの誤送信が情報漏えいを招く危険性を、従業員全員が理解することが重要です。そこで、社員教育の一環としてメール誤送信をしたときの情報漏えいのリスクを周知徹底することが重要です。具体的には、以下の内容を社員に教育しましょう。
  • メール誤送信の重大性
  • 情報漏えいのリスク
  • 誤送信を防ぐための具体的な対策

また、定期的に研修を実施することで、社員の意識を高めることができます。さらに適切な情報セキュリティポリシーを策定し、社内外に広報することで、従業員が情報漏えいのリスクを自覚し、注意を払うよう促すことができます。

メールの誤送信防止ツールを導入する

メール誤送信防止ツールは、リスクを軽減するために、メール送信前に誤送信の可能性を検知し、送信を阻止したり、送信者に確認を促したりするソフトウェアです。

社外メール送信時の一次保留や上長承認機能などの機能が利用できるツールも存在します。

メール誤送信防止ツールを選ぶ際は、以下のポイントを確認しましょう。

  • 必要な機能
  • 導入コスト
  • 使いやすさ
  • サポート体制
  • 拡張性

詳しくは、以下の記事で紹介していますので、合わせてご確認ください。

情報漏えい対策として注目されるメール誤送信対策ソフト

このようなメールを起因とする情報漏えいを防止する解決策として「メール誤送信対策ツール」が各ベンダーから提供されています。近年はHENNGE OneのDLP EditionのようなSaaS型での提供も増えており、多くの企業で利用されています。これらのツールでは「受信アドレス/送信アドレス、本文、添付ファイル」等の送信メールの条件を事前に設定されたフィルタールールに照らし合わせて、「一時保留、自動削除、上長承認」などの処理動作を自動化することができます。

一方で、いざ電子メールの誤送信対策を目的にツール導入を進めようとしても、導入効果の算出が難しいため投資に至らないというケースも散見されます。次章でツール導入の投資対効果について見ていきましょう。

メール誤送信対策ソフトの効果

今回はHENNGE OneのDLP Editionを例に、ツールの導入の投資対効果を検証してみます。

上記件数は、2022年2月から2023年1月の1年間にDLP Editionを経由して送信されたメールの中で

送信者本人
送信者の上長等
事前に設定されたルール

これらを条件に「手動もしくはシステムによって自動」で削除された送信メールの件数となります。

送信者もしくは社内ルールから「このメールは社外へ送るべきではない」と判断されたメールが年間1,650万件以上も削除されていました。
送信が止められた理由には「宛先間違い、誤字脱字、添付ファイルの添付し忘れ」なども含まれるため、全ての件数が重大な個人情報漏えいに繋がるものではありませんが、決して少なくない数字ではないでしょうか。

また、仮に手動もしくは自動で削除されたメールのうち1%が個人情報漏えいに繋がる内容とした場合、想定賠償金額に換算すると約46億円(※)分の情報漏えいリスクを防いだことになります。

まとめ

電子メールの誤送信のリスクと、その対策に取り組む際にメール誤送信対策ソフトがもたらす効果について解説しました。メール誤送信による情報漏えいは損害額が大きくビジネス上の大きなリスクとなりますが、メール誤送信対策ツールを利用すれば、「本人や上長による送信時ダブルチェック」や「社内ルールに基づいた自動ルール」など仕組み化によってリスクを軽減することができるでしょう。

HENNGE OneのDLP Editionは、クラウドメールに対して、メール誤送信対策やメール監査機能などのメールセキュリティ機能を備えています。また、HENNGEでは実際の顧客の誤送信対策への取り組みや設定例に関する知見を提供しています。ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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